政府がクレジットカード会社へ加盟店手数料の引き下げを要請しているみたいだけど普及効果はまったく無いと思う

消費税の増税とキャッシュレス化の推進を同時に行おうとしている政府のポイント2%還元政策

 
10月18日にまた新たな動きがあって、それは小売店がクレジットカード決済を導入しやすいように加盟店手数料の引き下げをクレジットカード会社に要請すると言うものです。

どうして役人は誰も得しない政策ばかり思いつくのでしょうか?

民間企業ですよ?

政府が民間企業のビジネスに口を出すのはどうなのでしょうか?

電波と言う限られた資源を使っていて、価格競争の無い談合状態の携帯電話会社に値下げの要求をするのとは訳が違います。

しかも自分たちはクレジットカードで税金を納付すると手数料を取っているくせに・・・。

 
2014年12月に欧州議会でクレジットカードの上限手数料が0.3%、デビットカードは0.2%とする合意がされているので、政府がクレジットカード手数料の引き下げを要請するのは珍しいことではありません。

これができるのはEUという大きな市場であること、カード決済の比率が大きいこと、リボルビング払いなどの金利手数料収入が多いからであって、一括払いだらけの日本では加盟店手数料を下げるのは難しいです。

もしこのレベルの手数料まで下げるのを要求しているのならば、ビジネス上の旨味が無くなったVISAやMastercardが撤退してしまう可能性さえあり、JCBを国営企業にでもしなければシステムを維持できないでしょう。

株式会社ジェーシービーの売上は約2,800億円、利益は280億円となっており、売上の大半は加盟店手数料収入だと思いますので、これが10分の1になるとしたら企業を維持することができないのは明白です。
日系企業のJCBならまだしも、外資系企業のVISAやMastercardが日本政府の要請を受ける訳ないと思う人がいるかもしれませんが、日本でクレジットカードを発行しているのは楽天カードやクレディセゾンと言った日系企業で、VISAやMastercardは決済システムを提供しているだけです。クレジットカードを発行している日系企業がVISAやMastercardと手数料の交渉をしなければいけなくなるのですが・・・。

 

年会費が上がる?

加盟店手数料が減ればクレジットカード会社はその分の売上をどこかで作らないといけなくなり、真っ先に思いつくのは加盟店手数料収入の3分の1~4分の1くらいと言われている年会費の値上げです。

しかし、年会費を払ってでも保持メリットがあると考える人はそれほど多くは無く(ゴールドカード以上を保有しているのは5人に1人)、年会費が掛かるならクレジットカードはいらないと言う人もでてきてしまうでしょうから、年会費の値上げだけでカバーするのは無理でしょう。

そうなるとクレジットカード会社が生き残りのために目指すのはリボルビング払いなどの金利手数料収入の増加で、今よりも積極的に活用してもらおうといろいろ手段を講じてくるでしょう。

例えば年会費無料のカードは最初はリボルビング払いの設定になっていて、知らない人は気づかない内に金利手数料を取られているとか・・・。

また、加盟店手数料収入が減ればポイント還元率も低くなってしまうでしょう。

「年会費無料のカードをいきなり値上げできるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、カードの利用期限が切れると同時に廃止となり、更新ではなく新しく年会費有料のカードを紹介される流れで実質値上げされることになると思います。もちろん紹介されたカードを作らないで他の年会費無料のカードを作ることもできますが、審査がどうなるかはわかりません。

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メリットが無い

加盟店手数料が引き下げられれば小売店がクレジットカード決済を導入すると政府は考えているのかもしれませんがそんなことは絶対にありません。

数%手数料が安くなるよりも、売上をごまかして脱税したほうがお得だからです。

外国人観光客が多いエリアや意識高い系の人が生息するエリアならばお客さんの数を増やせるので導入するメリットはありますが、そうでないエリアならば脱税メリットの方が大きくなります。

だからこそ政府はどうにかしてキャッシュレス化を進めたいと言うもあるのですが・・・。

 
政府がもしキャッシュレスを推進したいのであれば、小売店のメリットを考えるのではなく(絶対に脱税メリットの方が大きくなるので)、現金払いを続けた場合のデメリットを増やしていった方が良いと思います。

ATM出金手数料の完全有料化&圧倒的値上げ&台数の圧倒的削減、10,000円札や5,000円札の廃止、現金利用税の導入など。

特に高額紙幣の廃止はタンス預金などが市場に出てくるので経済効果も高いと思います。

 

続報

ポイントを発行するカード会社などを通じて還元し、費用は国が補助する。
https://www.sankei.com/economy/news/181019/ecn1810190004-n1.html

還元される2%のポイントはクレジットカード会社のポイントになりそうです。

政府の発行する使い勝手の悪そうなポイントにならなそうなのは良いことだと思います。

 

手数料3%台を目安とする案が有力だ。
https://www.47news.jp/2891935.html

3%台だと楽天ペイ、AirPAY、Squareを利用するとのあまり変わらないような気が・・・。

その程度の要請ということでしたね。

加盟店手数料を値下げしないVISAが悪者みたいな報道をされていますがVISAの取り分は0.1%程度です

10%へ消費税増税する際に中小小売店への救済策としてキャッシュレス決済時に2%ポイント還元する政策を政府が準備していますが、その際にクレジットカード会社に加盟店手数料を下げるように要請しています。

 
しかし国際ブランドのVISAはこの要請に対し「関係ない」と言ったスタンスで、手数料を値下げする気は無いようです。

米国企業のVISA.incが日本政府の「お願い」を聞く必要は無いので、私はこの対応は当然だと思うのですが、値下げに応じないVISAに対して負の感情を持つ人が多いみたいです。

法律で上限を決めるべきでは?

日本政府からの「お願い」をVISAがもし受け入れると、VISAの株主は「どうして利益が減ってしまうことを受け入れるのか」「交渉で失敗したのか」「経営陣は無能なのか」と反発するでしょう。

しかし日本がEUやカナダのように法律で決済手数料の上限を決めてしまった場合、VISAの株主はVISAの経営陣に対してではなく、日本政府に対して反発することになります。

VISAに決済手数料の値下げを受け入れさせるとしたら法律で上限を決めるしかありません。

もちろん日本政府がアメリカ政府から批判を受ける可能性はありますし、JCBがアメリカでの事業を行いにくくする政策が取られてしまうかもしれません。

また、VISAが日本で事業を行う旨味が無くなったとして日本事業を撤退してしまい、結果として日本国民が不便をしいられることもあります。

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JCBの手数料を下げれば良いのでは?

米国企業であるVISA.incには「お願い」が通じないかもしれませんが、国内企業であるJCBには「お願い」が通じる可能性はあり、JCBの手数料を圧倒的に下げることで加盟店がJCBだけに対応するようになれば、VISAも手数料を下げざるを得なくなります。

外国人観光客が多くなっている現状でJCBだけに対応する加盟店なんて出てこないと思いますので、この施策は現実的ではありません。

そもそもJCBも手数料を下げることでシェアが伸びるのであればとっくにそうしているでしょう。

VISAの収入はあまり多くない

加盟店が支払っているクレジットカード決済手数料の内、VISAなどの国際ブラドに支払っているのはほんのわずかで、全体の3%程度です。

VISAに手数料を安くしろと言ったところでその幅はとても小さく、仮にというか絶対にありえませんが、VISAが無料開放したとしても加盟店が増えることはないでしょう。

3%と言うのは手数料の3%で、決済額全体の0.1%程度になります。例えば、加盟店で10,000円の買い物が行われたときにクレジットカード会社が得る手数料は300円程度で、その内VISAなどの国際ブランドに支払っている金額は約10円になります。

 
VISAがほとんど収入を得ていないのに、クレジットカードの決済手数料が高くなってしまうのは会員の管理コストやネットワークの維持にかなりの費用が掛かるからです。

・加盟店開拓コスト
・会員管理コスト
・カード発行コスト
・与信審査コスト
・ネットワーク使用料
・決済端末利用料
・銀行振込手数料
・ポイント還元コスト

国際ブランドの使用料以外にも多くのコストがクレジットカードの維持・利用の為には掛かっています。

もし決済手数料を安くしなければいけなくなった場合、これらのどれかを切り捨てなければいけなくなります。

もし手数料に上限がついたら・・・

真っ先に無くなるのは年会費無料のクレジットカードで、残ったとしてもリボ払い専用などと言った条件がついたものになるでしょう。

日本人はクレジットカードを作るけど普段は使わない、海外旅行に行った時やいざと言うときだけ使う傾向にあり、そういう会員は管理コストばかり掛かって儲からないので、クレジットカードを持てなくなる可能性があります。
(年会費有料のカードしか持てなくなり、それならば保有しないという人が多くなるでしょう)

また、ポイント還元の割合も確実に減るので、いまクレジットカードを頻繁に利用している人も使わなくなる可能性があります。

 
そもそも加盟店手数料が5%から3%に引き下げられたからと言ってクレジットカードに対応する小売店はほとんど無いと思います。

対応が必要なお店は5%でも導入しているでしょうし、必要ないと考えているお店は0%でも対応しないでしょう。

お客さんが少し増えるよりも、脱税(二重帳簿やそれによる意図的な小規模事業者に係る納税義務の免除)をし続けた方がメリットは大きいですから。

 
政府による強引な加盟店手数料値下げは、キャッシュレス化を推進するどころか、鈍化させてしまう可能性の方が大きいと思います。

もしキャッシュレス化を一気に進めたいのであれば、現金の使い勝手を悪くするしかありません。

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VISAが悪者にされる理由

今回やけにVISAが悪者にされているのは、VISAがVisa Touch(Visa payWave)を強制的に普及させようとしていることに対する抵抗、VISAの印象を悪くしたい人がいるのかもしれません。

VISAは日本での電子マネー市場と言いますか、少額決済市場において出遅れており、そのシェアを伸ばすためにクレジットカード会社に対してVISAを国際ブランドにするならSuicaやEdyやiDと言ったカードとの一体化は禁止する、新規に契約する加盟店は旧式の端末ではなく、Visa Touch(Visa payWave)に対応した端末(手数料が高い)を導入を義務付けるなどの圧力を掛けているようです。

そのためVISAは面倒な存在になっており、国際ブランドがVISAのカードの発行を取りやめるカード会社が出てきたり、JCBもMasterCardもAMEXもdinersも利用できるのにVISAだけが利用できない加盟店が出てきたりしています。

VISAが強気でいられるのはシェアが高いからなので、もし下がれば圧力も弱まるだろうと期待しているのではないでしょうか?


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