政府がキャッシュレス社会を推進するのは「脱税とマネーロンダリングの防止」「ATMの維持費削減」「外国企業による決済ビジネス寡占の防止」「消費拡大」など目的がたくさんある

現金ではなく、クレジットカードや電子マネーでの決済の割合を上げる「キャッシュレス社会」を政府主導で促進しているのには様々な理由があります。

良くニュースで見るのは、「増え続けている外国人観光客がクレジットカードを使いやす環境にし観光業の収入を増やそう」と言うものですが、それ以外にもたくさんの目的があり、実はそっちが本命では無いかと僕は思っています。

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どうしてキャッシュレス?

政府や民間企業がキャッシュレス社会を早期に実現したい理由は以下のような事だと思います。

お金の流れを把握する

現金の場合、誰から誰にどんな理由で移動したのかを把握するのはほぼ不可能です。

小売店が二重帳簿を用意して脱税するのを、反社会的勢力の人間に裏金が渡っているのを、生活保護者が不正に受給してパチンコで使ったりしているのを防ぐことはできません。

キャッシュレスにしてすべてがデジタルデータになれば、政府はお金の流れを把握することができるので、脱税を防止できますし、反社会的勢力が拡大するのも防げますし、不正な生活保護受給も減らせます。

つまり、キャッシュレス社会になって一番得をするのは真面目に税金を支払っているサラリーマンなので、日本人の大半は現金を使わない社会の推進に協力した方が良いです。

 

ATMの削減

「クレジットカードや電子マネーで支払うと、決済手数料が掛かるのでお店が損をしてしまう。」と言う人が多いのですが、この人たちは現金をきちんと流通させるのにどれだけのコストが掛かっているのかを考慮していません。

・お札や硬貨を作るのに掛かるコスト
・ATMを維持するのに掛かるコスト
・現金を各ATMに輸送するコスト
・店舗がレジでおつりを用意するコスト
・店舗が現金を数えて会計処理をするコスト
・盗難防止などの警備に掛かるコスト

現金決済なら無料と言う考えをそろそろ捨てるべきで(実際は税金などでかなりの金額を負担している)、フィンテック技術が進化した今ならば決済手数料を支払った方が安く済む可能性が高いです。

徴税が確実にできることも踏まえれば、一般市民にはキャッシュレスの方がずっとずっと得です。

 

消費拡大

キャッシュレスによる消費拡大と言うのは外国人旅行者対策ではなく、日本に住んでいる人に向けてのものです。

クレジットカードを使う人の消費支出額はは使わない人に比べると、平均して約23%増えると言う調査結果が出ており、日本の家計の消費支出額は約285兆円あるので、50兆円くらいのGDPの押し上げ効果があると推測できます。

 
外国人観光客の消費支出額は年間4~5兆円しかないので、消費金額が増えるのは外貨が稼げるので良いですが、それほどのインパクトはありません。

 

外国資本への対抗

クレジットカード決済のシェアはVISAとMasterCardと言う外国資本に握られてしまいましたが、Suicaなどの電子マネーに使われる非接触型ICカード(フェリカ)はソニーが開発した物で、日本国内では外国資本が入って来ることはありませんでした。

しかし、近距離無線通信(NFC)の技術を持つ企業はどんどん増え、特にVISAが拡大に力を入れているVisa payWaveがシェアを握ってしまうと、お金の流れがすべて外国資本に握られてしまう状況になってしまいます。

またQRコード決済も中国で先行している支付宝(アリペイ)Wechat Pay(ウィチャットペイ)に取られてしまうのは避けたいです。

決済手数料が1%としても、家計支出が250兆円あるので、2.5兆円が毎年国外に流出してしまう事になりますし、チャージ型やプリペイド型の場合、デポジットした分は預金が国外の企業に流れているのと一緒なので、国内への投資が出来なくなってしまいます。

また、セルフレジや無人店舗などの新しいビジネスの開発でも遅れがでてしまいます。

政府が外国資本に決済サービスを握られてしまうのを避けなければいけないと必死になるのは当然なのです。

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拡大させる方法は?

キャッシュレスを拡大させる方法として考えられるのは「キャッシュレスを優遇」「現金を不便にする」のどちらかです。

 

キャッシュレスを優遇

クレジットカード決済に特典がある国はいくつかあります。

韓国の場合はクレジットカード払いによる消費には控除が受けられますし、台湾ではレシート(明細)が宝くじになっていたります。

日本でもポイント還元が受けられると言うメッリトがあるのですが、各企業で独自のものだったりするので、利便性はかなり低くなっています。

「加盟店から取る決済手数料を外国のように下げれば普及するのでは?」と言う意見も多いですが、日本ではリボ払いやキャッシングなどの金額が諸外国に比べて著しく低いので、クレジットカード会社が利息で稼ぐことができず、システムを維持するために高額な決済手数料を加盟店から取らなければいけないのです。

電子マネーなら決済手数料が掛からないと思っている人もいるでしょうが、独自発行のものでなければ利息による収入が無い分だけ高くなっている可能性もあります。

 

現金を不便にする

日本のキャッシュレス率が低いのは現金決済が便利すぎるからです。

・ATMで24時間引き出せる
・ATMの台数が多い
・日中ならATM手数料無料
・偽札を掴まされない

この状況が続く限りはキャッシュレス社会は訪れないと思います。

実際に現金よりもクレジットカードや電子マネーを使った方が便利で得なサービス、高速道路のETCカードや交通系ICカードの普及は物凄い進んでいます。
(料金が安いのは消費税を考慮してですが)

また、銀行の経営悪化と共にATMの台数の削減、取扱手数料の値上げは近い将来必ず起こると思います。

そうなると急激に現金比率は下がると思いますので、その時までに日本企業による決済サービスを普及させなければいけません。

 

QRコード決済の普及

クレジットカード決済が普及してもVISAやMasterCardの利益になるだけなので、政府は国内規格での普及を目指しています。

「非接触型ICカードの電子マネーならば国内の利益になりますし、QRコード決済よりも早くて便利」という意見もありますが、店舗への導入コストの問題でQRコードの方がメリットがあります。

QRコード決済はスマホやタブレットがあれば決済できるのに対し、非接触型ICカードは専門の端末を用意しなければいけません。

また、政府はマイナス金利で収益を出しにくい銀行への救済として、銀行口座直結のQRコード決済事業者を支援し、収益源を確保させる狙いもあるように思います。

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デメリットもあります

キャッシュレスが高い割合で実現しないと見えてこないものもあると思いますが、現状でも以下に紹介するものがデメリットとして予測されています。

 

トラブルに弱い

QRコード決済がシェアを取った場合、スマホの重要性がこれまで以上に高くなり、紛失してしまった時の被害が大きくなります。

急な故障やバッテリー切れなどでスマホが使えなくなった場合、不便を強いられることになるでしょう。

また、地震などの災害時には電力の供給が止まってしまえば、店舗がキャッシュレス決済に対応できなくなり、一般消費者は商品を購入することができません。

 

店舗への負担

現金の流通コストを消費者や店舗に求めることでキャッシュレスが実現した場合、決済手数料はお店が負担することになります。

キャッシュレスが高い割合で浸透すればボリュームディスカウントされどんどん安くなるでしょうが、現金がほぼ手数料無料で手に入る今に比べるとコストが掛かることには変わりません。

また実際に商品が売れてから、手元にお金が届くまでの時間にギャップが出来てしまうのも問題です。

お客さんがクレジットカードで支払った場合、入金されるのが2~3ヶ月後なのに対して、家賃が銀行振り込みならば出金はリアルタイムです。

経営が上手く行っていても、手元にお金が無いために事業が続けられない黒字倒産に追い込まれたりする店舗がでてきても不思議ではありません。

クレジットカードではなく、銀行口座直結のQRコード式を普及させたい理由として、決済から入金までの間隔を短くしやすいからというのもあるかもしれません。

 

信用の低い人達

信用度が低いためにスマホを持てないと言う人は少ないかもしれませんが(3大キャリアのものは料金が高いので持てないかもしれませんが、格安スマホは持てるでしょう)、クレジットカードを持てない人はたくさんいます。

この人たちにどう対応するかと言うと、不便な生活をしてもらうしかありません。

キャッシュレス社会と言っても現金が完全に無くなる訳ではありませんので、必要なものが絶対に買えないと言う訳ではありません。

遠くまで行かないといけない、営業時間が短いお店しか利用できない、割高な商品を買わないといけないなどはあるでしょうが。

 

失業者の増加

社会の効率化が進めば、無駄な作業をしていた人たちの仕事は無くなります。

お金の流れをきちんと把握できるようになれば、税理士や会計士の仕事は減りますし、ATMを維持管理する人もいらなくなりますし、銀行員のほとんどもいらなくなるでしょう。

無人レジや無人店舗も増えるでしょうから、販売員の仕事も減ります。

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今やるべきこと

キャッシュレス化が進んでからクレジットカードを作れば良いと考え、直前になって審査に申し込んだら落ちてしまったなんて事になったら不便を強いられてしまいますので、今の内からクレヒス(クレジットヒストリー)を育てておきましょう。

 
また、キャッシュレス化によって仕事が無くなりそうな人は早い段階で転職を視野に入れるべきです。

社会の変化で仕事が無くなる時、同時に新しい仕事も生まれるのですが、フィンテックのような高度な技術革新により生まれる仕事には準備無しで就くことはできません。

キャッシュレス化の流れは絶対に止まらないですから、早めの準備をしておきましょう。


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